大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成5年(ワ)5917号 判決 1994年10月18日

原告

三浦実

被告

野沢綾子

主文

一  被告は、原告に対し、金七八六万二八九五円及びこれに対する平成四年二月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを九分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

一  被告は、原告に対し、金七三三九万六七五九円及びこれに対する平成四年二月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用の被告の負担

第二事案の概要

一  本件は、Y字形交差点において、足踏自転車同士の衝突事故があり、その一方の者が一眼を失明する等の傷害を受けたことから、相手方に対してその人損について賠償を求めた事案である。

二  争いのない事実

次のとおり、本件交通事故が発生した。

事故の日時 平成四年二月二六日午前八時一〇分ないし二五分ころ(事故発発生の正確な時間については、争いがある。)

事故の場所 埼玉県越谷市袋町一六六〇番地先Y字形交差点付近路上(別紙交通事故現場見取図参照。以下、同図面を「別紙図面」という。)

事故の態様 右場所にある、信号により交通整理の行われていないY字形交差点において、原告は自転車に乗つて恩間方面からの道路から大袋駅方面に向かう直線道路に左折したところ、自転車に乗り、大袋駅方面から直線道路を走行し、恩間方面に向かう道路へ右折しようとした被告と衝突したことは争いがないが、その態様については争いがある。

三  本件の争点

1  本件事故の態様及び被告の責任

(一) 原告

原告は、時速五ないし一〇キロメートルに減速し、道路の左側を徐行して本件交差点に進入したところ、被告は、前記直線道路の右側を猛スピートで走行したため、これを発見した原告の急ブレーキにもかかわらず衝突した。このため、被告の頭部が原告の胸部にぶつかり、原告が被告に覆いかぶさるように転倒する際、被告の自転車のハンドル又はブレーキ部分が原告の左目に突き刺さる形になつた。

(二) 被告

本件事故は、停止寸前の被告運転の自転車の前輪に、右前方から原告運転の自転車が猛スピートでその前輪から衝突し、このため、被告が自己の自転車とともに倒れ、その被告の上に原告が覆いかぶさるように原告の前方方向に倒れたものである。本件交差点の道路が狭いことから道路交通法三四条三項に示すような右折方法をとる自転車は皆無であることを斟酌すると、本件事故は、原告の自損行為であり、被告には責任がない。

2  損害額

(一) 原告

本件事故により胸腹部打撲、頭部打撲、左眼窩内壁骨折等の傷害を受け、次の損害を受けた。

(1) 治療関係費

<1> 差額ベツド代、診断書代、その他 三五万九一七〇円

<2> 入通院付添費 三七万〇〇〇〇円

<3> 入院雑費 七万三二〇〇円

<4> 通院交通費 四万六四四〇円

(2) 逸失利益 五九一二万七九四九円

原告は、本件事故当時四二歳であるところ、本件事故のため一眼の失明及び一眼に著しい運動障害の後遺症(併合七級相当)を残し、このため、労働能力が五六パーセント喪失した。そこで、原告の年収七四九万一五三〇円を基準に、ライプニツツ方式により算定した。

(3) 慰謝料 一〇四二万〇〇〇〇円

入通院(傷害)慰謝料として一九二万円、後遺症慰謝料として八五〇万円が相当である。

(4) 弁護士費用 三〇〇万〇〇〇〇円

(二) 被告

原告の後遺障害は八級が相当であり、また、原告は従前どおりの勤務先で勤務しているから、原告主張の逸失利益は生じない。さらに、自転車事故の場合は、慰謝料の算定は、自動車事故の基準によるべきではなく、原告主張損害はいずれも過大である。

第三争点に対する判断

一  本件事故の態様及び免責の可否

1  甲二、三、四八、四九、乙一ないし六、七の1ないし3、原告、被告各本人によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件事故のあつた交差点は、別紙図面のとおり、恩間方面からの幅員四・四メートルの道路が、国道四号線からの幅員二・六メートルの道路に約四五度の角度で合流し、国道四号線からの道路が幅員四・二メートルの道路となつて大袋駅方面に向かう様相を示している。恩間方面からの道路と大袋駅方面に向かう道路の角には民家、自動販売機、ブロツク塀が存在していて、いずれの方向からも他方の交通事情を知ることが困難な状況にあるが、恩間方面からの道路と国道四号線からの道路との角は畑であつて、いずれの側からも他方の道路の見通しが効く。恩間方面からの道路から交差点に進入する前には、道路右側にある電信柱の手前に高さ一・五メートル以上の象牙色の地肌の看板があり、同看板には赤色で「止まれ」と大きく書かれている。

本件交差点から大袋駅方面に向かう道路は、本件事故のあつた時間帯は、通学、通勤等の歩行者、自転車で結構混んでおり、また、時には自動車も通行していた。大袋駅方面に向かう歩行者や自転車のほうが、逆方向に向かうものよりも多く、七対三の割合である。歩行者や自転車は、整然と右側又は左側通行をしているわけではなく、時には入り乱れて通行している。

(2) 原告は、池袋に本店のある「初穂」という名の株式会社に勤務しており、本件事故当日、高崎駅で顧客と会うため、自宅から自転車に乗り前籠に荷物を積んで、普段の通勤経路と同じ経路で大袋駅に向かつた。そして、恩間方面から本件交差点にさしかかり、大袋駅方面に本件交差点を左折した。原告は、時間的に余裕をもつて自宅を出発したため、特に急がなければならない事情にはなかつた。

(3) 被告は、通学のため、大袋駅付近にある自宅から自転車に乗り、同駅からの道路を本件交差点に向かつて進行し、本件交差点を右折して恩間方面に向かい、本件交差点の少し先にある友人宅を尋ね、それから同行して通学するのを常としていた。事故当日も学校指定の制服、スカート及びコートを着用して通常どおり午前八時ころ自宅を出て、八時五分ころ大袋駅方面から本件交差点を右折しようとした。自宅から学校までの自転車通学に要する時間は約二〇分であり、八時三五分までに登校するように指導されていたことから、友人宅を尋ねてもなお時間的に余裕があり、被告も、本件事故当時、特に急がなければならない事情にはなかつた。

(4) 本件事故後しばらく経た午前八時一一分に救急車が呼び出され、原告は、同車でせんげん台病院に運ばれ、胸腹部打撲、頭部打撲、左眼瞼挫創、左眼球打撲、前房出血の傷病名で入院した。他方、被告は、本件事故により左頭頂部、鼻根部、左上腕部を打撲し、越谷市立病院に行き、頭部、顔面外傷の傷病名で治療を受けた。

本件事故により、原告自転車は、前輪のタイヤが後ろにずれ、また、パンクした。被告自転車は、前輪タイヤの前部がスポーク部分から左に曲がり、その後部の右側は泥除けと前輪中央部を結ぶ金属棒と接触し、また、泥除けとタイヤが接触する程度まで後ろにずれた。さらに、チェーンが外れ、前の籠の左側部分は凹損した。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

2  原告は、本件事故につき、本人尋問において「恩間方面から道路の左側を時速約一〇キロメートルで走行した。いつもは、本件交差点でほぼ止まれるぐらいまで減速してゆつくり曲がる。事故当日は、減速して曲がり切り、ペダルを踏み込んだ辺り(別紙図面<3>を過ぎた辺り)で衝突した。国道四号線方面から大袋駅方面への直線道路には、歩行者や自転車が存在した。曲がりきつてから別紙図面<3>の手前辺りに来たときに、被告が約三メートル前方にいるのを発見して、急ブレーキをかけたが衝突したのであり、衝突の時は、原告自転車はほぼ停止状態であつたが、完全には停止はしていなかつた。被告は結構速度が出ていた。前輪同士が衝突し、被告の頭が原告の胸にぶつかつてきた。原告自身は前にのめつたような形となり、前かがみで自転車ごと左側に倒れ、その後に眼に鋭利な部分が突き刺さつた。」と供述する。

他方、被告は、本人尋問において「大袋駅方面から同駅方面に向かう歩行者や自転車をよけながら、本件交差点に向かつて自転車で進行した。駅方面に向かう歩行者をよけようとして別紙図面<1>から<2>へと右側に行つたが、建物と自動販売機の間に恩間方面から本件交差点に向かう人影を発見したので、道路中央(別紙図面<イ>の地点)に向かおうとした。しかし、前方から走行する自転車に阻まれ、そのまま軽くブレーキをかけながら曲がり角に差し掛かつた。そして、原告を前方約一メートルに発見してブレーキをかけ、被告自転車は完全に停止したが、原告が衝突してきた。衝突時、原告の速度は早かつたと思われる。被告は自転車に乗つたまま左側を下にして倒れ、原告自転車の前輪は被告自転車に絡まり、また、原告は被告の自転車の前輪を覆うようにして倒れた。左頭頂部及び左腕は地面にぶつつけ、また、鼻根部は原告のハンドルの金属部分にぶつつけて、それぞれ打撲傷を負つた。」と供述する。

なお、甲四八によれば、被告は、本件事故の後、警察の実況見分に立会い、別紙図面<1>の地点で<ア>の位置にいる原告を発見し、<2>で大回りをしようとしたが、<×>で衝突し、被告は<3>に、原告はイにそれぞれ倒れたと指示したことが認められるが、被告は、本人尋問において、当時は頭がふらふらしていて、右指示は正確とは言えないと供述する。

3  そこで検討すると、被告自転車の損傷状態及び被告の本件事故後の傷からすると、被告は、自転車に乗つたまま左側を下にして倒れたものと認められる。また、原告が被告に覆いかぶさるように転倒したことは当事者間に争いがなく、このことに原被告の右各供述を総合すると、衝突後、原告自転車の前輪は被告自転車に絡まり、また、原告は、前にのめつたような形となつて前かがみで被告自転車の前輪を覆うようにして倒れ、その際、原告の左眼に被告自転車のハンドル又はブレーキの先端が当たつたものと認められる。

次に、本件事故当時の前示の交通事情及び原被告ともに急がなければならない事情になかつたことに照らせば、原告が本件交差点の手前で減速したことは原告の供述どおり認めるのが相当であり、また、被告も、対向する自転車や歩行者をすりぬけての走行であることから、大袋駅方面に向かう歩行者をよけようとして別紙図面<1>から<2>へと右側に寄り、減速して自転車を走行させたことは、被告の供述どおり認めるのが相当である。

さらに、原被告両自転車の損傷状態及び被告の右供述によれば、被告が、原告自転車を回避するため別紙図面<2>から<イ>の地点へ大回りをするため被告自転車の前輪をやや左向きにしたところ、原告自転車の前輪が、被告自転車の前輪の前部右側に衝突し、このために、被告自転車の前輪は前示の損傷状態となり、また、原告自転車の前輪のタイヤもその衝突の影響で後ろにずれたものと推認できる。原告の供述によれば、原告は本件交差点を曲がり切つた後ペダルを踏み込んでおり、また、完全には停止はしていないのであつて、それまで原告が自転車を減速したとしても、踏み込んだ途端に衝突したものと仮定すれば、破壊力が増すことから、右推認と合致し、この状態を被告は「衝突時、原告の速度は早かつたと思われる。」と供述したものと考えられる。この点、原告は、本件交差点を曲がりきつてから別紙図面<3>の手前辺りに来たときに、被告が約三メートル前方にいるのを発見した、被告は結構速度が出ており、被告の顔が原告の胸に当たつたと供述するが、ほぼ停止している原告に被告のほうから衝突し、かつ、被告の顔が原告の胸に当たつたとするならば、原告が前のめりになつて倒れることは考えられず、右供述を採用するのは困難である。

4  右検討の結果によれば、本件事故は、原告が交差点の手前で減速して本件交差点に進入し、曲がり切つた後ペダルを踏み込んだ時に原告自転車の前輪が被告自転車の前輪右側に衝突し、その結果、原告が前かがみで被告自転車の前輪を覆うようにして倒れた結果生じたものであると認めるのが相当である。なお、本件事故時の被告の行動は、大袋駅からの道路の右側を減速しながら通行し、原告を発見して直ちにブレーキをかけ、被告自転車が停止した途端に原告自転車と衝突したものであると認めるのが相当である。そして、被告は、本人尋問において「大袋駅方面から道路の左側を自転車で通行し、本件交差点で停止した上で右折して恩間方面に向かう方法をとれば、交差点での停止時に後続の自転車による追突を受けるので、内回りのほうが行い易い」と供述していることから、本件事故時において、歩行者をよけようとして大袋駅からの道路の右側を通行することになつたものの、右側通行を自ら容認して走行したものと推認される。右認定に反する原被告の各供述は前示検討の結果に照らして採用しない。

そうすると、本件事故は、被告が大袋駅からの道路を通行するに当たり、左側を走行すべきところを右側を走行し、本件交差点も右側から進入したことのため、原告自転車との衝突を招来したものであつて、被告の右義務違反による過失責任は免れない。

5  他方、原告も、直線道路に進入するに当たり、「止まれ」と大きく書かれた看板にもかかわらず、減速をしたのみで本件交差点に進入し、その後、前方の道路事情の確認を不十分のままペダルを踏み込んだものと言わざるを得ず、このような停止義務違反、前方注視義務違反も本件事故の原因となつていることは明らかである。

そして、被告の過失と原告の過失の双方を対比して勘案し、また、前認定の本件交差点付近の自転車や歩行者の通行状況も斟酌すると、被告は明示で主張はしていないが、本件事故で原告の被つた損害については、その七五パーセントを過失相殺によつて減ずるのが相当である。

二  原告の損害額について

1  治療関係費 四七万八八一〇円

(一) 甲三ないし九、一一ないし一四、一六、一七、原告本人によれば、次の事実が認められ、同認定に反する証拠はない。

(1) 原告は、本件事故当日の平成四年二月二六日、救急車によりせんげん台病院に運ばれ、胸腹部打撲、頭部打撲、左眼瞼挫創、左眼球打撲、前房出血の傷病名で入院し、同月二九日、視力障害の治療のため、順天堂大学医学部附属順天堂医院に転院した。そして、数日の通院の後、同年三月六日から同月二六日まで同病院眼科に入院したが、左眼については窩内壁骨折、網膜動脈分枝閉塞症、視束管損傷等の傷害を負つていて、視力の改善が望めなかつた。また、左眼については下眼瞼瘢痕拘縮、涙管損傷の傷害も受け、人工の涙管を挿入する等の手術のため、同病院に同年一二月一日から二〇日まで入院した。その他、同病院では眼科のほか、脳外科、耳鼻咽喉科にも通院し、平成四年中に合計二一日間通院した。

(2) 右期間中の平成四年三月三一日東急病院眼科で診察を受け、また、同年四月二八日から五月二三日まで昭和大学病院麻酔科に入通院し(入院期間五月八日から二三日までの一六日、通院実日数五日)、星状神経節ブロツク施行を受けた。

(3) しかし、左眼の視力は回復せずに失明し、また、涙管が潰れ、前示の人工涙管挿入手術も成功せず、常に落ちてくる涙をハンカチで拭かなければならない状況にある。

(二) 右治療に関して、原告に生じた損害は次のとおりである。

(1) 治療費

甲一C、一五、一九ないし四二、原告本人によれば、原告の治療費自体は労災保険から支払われたが、なお、せんげん台病院等についての差額ベツド代として二九万九八二〇円、順天堂医院等の診断書代として少なくとも三万四〇〇〇円、人工の涙管代等として二万五三五〇円を要したことが認められる。

(2) 入通院付添費

原告は、入通院付添費を合計三七万円請求するが、現に原告の妻等が付添いをしたことや付添いを必要とする事情を認めるに足りる証拠はなく、右請求は失当である。

(3) 入院雑費

前示のとおり、原告は合計六一日間入院したところ、一日当たり一二〇〇円、合計七万三二〇〇円の入院雑費を要したものと認める。

(4) 通院交通費

甲一八、原告本人によれば、順天堂医院に空き部屋がなかつた平成四年二月二九日から三月四日までの通院に当たり、原告の姉の自宅(下落合)から同病院への通院のため同病院の指示によりタクシーを利用し、合計二万〇八〇〇円を費やしたこと、及びそれ以外の各病院への通院のため、合計二万五六四〇円の電車賃を要したことが認められる。

2  逸失利益 一九一七万二七七二円

甲四三、原告本人、前認定の事実によれば、原告は、平成三年は年間七四九万一五三〇円の収入があつたこと、本件事故当時四二歳であるところ、本件事故のため左眼を失明するとともに、涙管の欠如という後遺障害を残したこと、本件事故後勤務先の初穂に復職してからは、給料自体は減らされていないものの、自動車の運転に若干の支障を来たし、自己の左眼の外観が気になつて接客が億劫となつたこと、ゴルフ等の球技が出来なくなり、このため原告の職務であるゴルフ会員権販売にも支障を来しており、賞与が年間五〇万円程度減らされていることが認められる。

そうすると、右の後遺障害にもかかわらず、現実に収入は年間七パーセント程度しか減少していないというべきである。しかしながら、右の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表八級一号に相当するものであり(原告は、涙管の欠如につき別途一二級二号の後遺障害を主張するが、同部位たる左眼の障害であつて、八級一号に含まれる。もつとも、この点は、別途慰謝料で考慮する。)、同表を単純に当てはめると労働能力は四五パーセント喪失したものと評価され得るのであつて、原告の初穂における定年年齢は本件証拠上明らかではないが、定年後の再就職の際には、その職種にもよるが、右基準程度の労働能力の喪失を前提として、逸失利益を認めるのが相当である。

これらの点を総合すると、原告が本件事故により被つた逸失利益は、原告の現実の年収ではなく、抽象的な賃金センサス(平成四年度の男子全学歴全年齢のそれ)によるのが適当であり、六七歳に達するまでの二五年間につき平均して二五パーセントの労働能力が喪失したものと認めるのが相当である。ライブニツツ方式によりその現価を算定すると、一九一七万二七七二円となる。

計算 544万1400×0.25×14.094=1917万2772

3  慰謝料 九〇〇万円

前示の入通院の日数、治療の経過、後遺障害の部位、程度、内容(左眼の失明と同眼の涙管欠如による涙液の溢出)等に鑑みれば、通院(傷害)慰謝料として一五〇万円が、後遺症慰謝料として七五〇万円が相当である。

被告は、自転車事故の場合は、慰謝料の算定は自動車事故の基準によるべきでないと主張するが、同程度に傷害や後遺障害を受けた者については、同程度の慰謝料が認められるべきであるから、右主張に理由がない。

6  以上の合計金額は、二八六五万一五八二円であるが、前示のとおり七五パーセントの過失相殺をするのが相当であつて、右過失相殺後の原告の損害額は、七一九万四五九五円となる。

三  弁護士費用

本件の事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に鑑み、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、金七〇万円をもつて相当と認める。

第四結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求は、被告に対し、金七八六万二八九五円及びこれに対する本件事故の日である平成四年二月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。

(裁判官 南敏文)

交通事故現場見取図

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例